2025年5月5日月曜日

スミレ(ホンスミレ)

スミレ(ホンスミレ)(Viola mandshurica

キントラノオ目
スミレ科
スミレ属
スミレ

スミレはスミレ科スミレ属の植物の総称と同時に,
本種の名前でもあり紛らわしいため,
マンジュリカと呼ばれたり,ホンスミレと呼ばれたりしている.

ホンスミレ(Viola mandshurica)は,
日本各地の野原や道端で春(4〜5月)に見られるスミレ科の多年草.

ホンスミレの特徴
本州・四国・九州など日本全土に広く分布し,日当たりの良い場所に生育.
葉は長楕円状披針形で,葉柄に明瞭な「翼」があるのが特徴.
花は濃い紫色で唇弁の中央が白く,紫色の筋が入る.
側弁の基部には毛がある場合とない場合がある.
種子の一端にアリが好む脂肪体(エライオソーム)がついており,
アリが巣に運んで拡散に一役買う「アリ散布型植物」として知られる.
花の形が大工道具の墨壺(墨入れ)に似ていることから,
「すみれ」と名付けられと牧野富太郎先生が言われたが,定説ではない.

ホンスミレを含むスミレ属は,世界中に約500種.
日本列島には約250種・変種と,世界の約半数が自生しており,
「スミレ王国」と呼ばれていたりする.
ホンスミレの仲間は,開花しても種子ができない
「閉鎖花(花が開かないまま自家受粉し種子を作る)」を初夏以降につけて,
確実に種子を残す戦略を持つ.
ホンスミレの熟した果実は,乾燥すると裂けて種を遠くまで弾き飛ばす.
この飛距離は平均で2m近い.
庭の隅に固まって咲くのは,種が飛ばされ,障害物に当たって落ちたから.

スミレは木本(年輪を持つ)と,草本(年輪は無い)があるが,
海外では木本が多いが,国内はほとんど草本。

スミレの中のスミレ


食用にもされることがあり,
葉は和え物やスミレ飯,
花は二杯酢で楽しまれてきた文化がある.

最近危惧されていること
ホンスミレを含む在来種のスミレは,
園芸用外来種(パンジーや外来種スミレとの交雑種)との競合や,
生息地の減少などで減少が指摘されている.
草地や道端の管理方法の変化,開発などで生息地を失っているケースも目立つ.
気候変動による分布域の変化や,特に都市部や中山間地の草地の減少が,
維持に大きな影響を与えており,
「身近な野草なのに意外と減っている」と各地で話題になっている.

まとめ
生態と特徴
多年草で,春(4~6月)に濃い紫色の花を咲かせる.
草丈は7~15cmほど,花の直径は約2cm,
距(花の付け根の突き出た部分)の色も花弁と同じ濃紫.
葉は細長く,ハート形のスミレとは区別しやすい.
茎が地上に伸びない「無茎種」で,地下茎から葉と花柄が束生.
側弁の基部に白い毛があることが多い.
夏以降は花を開かずに自家受粉する「閉鎖花」をつけ,
確実に種子を残す工夫をしている.
草地や道端の土が溜まりやすい隙間などに生育し,
都市部でも見かける一方,栽培すると発芽しても定着しにくい.

食用について
ホンスミレは,昔から日本では葉や花を食用にしてきた伝統があり,
葉は和え物やスミレ飯,花は二杯酢などで食されることがある.
ただし,野草全般にアクや食感のクセがあるため,
大量に摂取するのは避けた方が良い.
生育地の環境や除草剤・農薬の使用状況もあるため,
食用にする場合は清潔な場所で採取したものを,
よく洗って下処理することを推奨する.

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